この会の前身である「子どもといのちの教育研究会」は、15年前のあるシンポジウムがきっかけとなって生まれました。それは、アメリカから『「さようなら」っていわせて』(大修館書店)の著者である、ボウルディン夫妻をお招きしておこなわれた、子どもと死をテーマとしたものでした。東京と名古屋で相次いで開催されたシンポジウムには合わせて500名にも及ぶ方々が集まられました。
主催者側の一人として、そのシンポジウムの司会進行役を担いながら、これほどたくさんの人々の熱意と意欲をこのままにしてしまうのは、とても残念だと思いました。そこで、継続的に集まれる場としての「子どもといのちの教育研究会」の設立をその場で決意し、呼びかけたのでした。 私たちの会は、そのようにしてスタートしました。
明確な設立趣旨が前提としてあって、それから後にできたものではありません。集まられた方々の思いも、立場も、立脚する地点も様々でした。会に対する期待も、願いも、思いも種々様々です。ですから、試行錯誤しながらにしても、とにかくこれまでの15年間をやってこられたことが、むしろ奇跡的なことのようにさえ思えます。ただ、私としてはむしろそうした様々な立場や角度からの考え方や思いを身近に感じ、受止めさせていただいたことに、喜びと感謝の思いを感じています。同じように会の皆さんが感じているから、この会は存在しつづけているのではないか、そんなふうに私は思っています。
この会を通じて、私たちなりに勉強し研究してきたことの成果として、初めの5年を経て『いのちを学ぶ・いのちを教える』(大修館書店、2002年)や、『いのちの教育~はじめる・深める授業のてびき』(実業之日本社、2003年)という書物をまとめあげることができました。特に後者では、研究会に参加されている皆さんがそれぞれの立場で考え、実践しているものの一部も収録することができました。研究会の成果の一端として、私自身は位置付けてもいいのではないかと思っています。その後も、『いのちの教育の理論と実践』(金子書房、2007年)や『自尊感情と共有体験の心理学』(金子書房、2010年)などで、いのちの教育に関する知見を発表してきました。
2014年は、記念すべき第15回の研究大会開催の年となりました。これを機会に、「子どもといのち」に関心を持つ人々の思いを共有する時間がさらに増え、その輪が少しずつでも広がっていくことを願い、「日本いのちの教育学会」と名称を変更し、さら活動を続けていこうと思いを新たにしています。